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会社の売却方法~事業譲渡編~



「会社売却」とは、会社の有形・無形の資産を第三者に譲り渡し、その対価を受け取るものですが、会社売却のうち「事業譲渡」の場合は、会社全体を譲り渡すのではなく、会社が行っている事業の全部または一部を譲り渡して事業を受け継いでもらうもので、会社の置かれた状況に応じて、さまざまな形で事業譲渡が活用されています。                                                                                   

 

事業譲渡による会社売却とは何か?

会社売却とは、会社が持っているすべての財産や、さまざまな権利・義務を第三者に譲り渡し、買い手からその対価を受け取るものです。

財産には現預金、株式、営業用資産のほか知的財産やノウハウなどの無形資産が含まれ、これに加えて取引先との関係、従業員の雇用などの契約関係に伴う権利・義務も譲渡の対象となります。

会社売却における代表的なスキームには次のものがあります。
  1. 株式譲渡
  2. 事業譲渡
「株式譲渡」とは、会社の株式を第三者に売却することで、その第三者に経営権を譲り渡し、その対価を得るものです。

「事業譲渡」とは、会社の事業の一部または全部を第三者に売却することで、その第三者に事業の運営そのものを譲り渡し、その対価を得るもので、実施の手続きが会社法で明確に定められているものです。

このほか、会社の組織再編手法としての「会社分割」や「合併」もありますが、会社売却と言った場合、株式譲渡または事業譲渡の手法のいずれかが活用されるケースが多くなります。

「参考:三菱UFJリサーチ&コンサルティング(平成29年度 中小企業の事業再編・統合、企業間連携に関する調査に係る委託事業 調査報告書))Q33 M&Aの実施形態

 

事業譲渡による会社売却の目的と役割

事業譲渡による会社売却の特徴は、会社が運営している事業の全部または一部を切り売りすること。

対象となる事業を第三者に譲り渡して受け継いでもらいますが、債権債務のすべてを譲り渡すことにはならず、また、雇用契約についてもすべてが引き継がれることにもならず、事業のうち、個々の契約で合意された技術・ノウハウなどを次代の経営者に引き渡す目的があります。

このように、事業譲渡による会社売却とは、契約で合意された範囲で現経営者から次代の経営者に事業をつなぐ橋渡しの役割を担います。

 

事業譲渡による会社売却の具体的事例は?

次に、最近の事業譲渡事例をご紹介しましょう。

2019年7月12日、株式会社朝日新聞社(以下、朝日新聞)は、株式会社Viibar(以下、ビーバー)が運営する動画メディアbouncy(バウンシー)を事業譲渡により譲り受けました。

朝日新聞が運営する動画メディア「Moovoo(ムーブー)」との一体的運用によって両事業の成長を図るとともに、朝日新聞とビーバーとのパートナーシップを強化してデジタル領域における動画活用の推進にともに注力することを目指した事業譲渡となります。

「参考:朝日新聞社、動画メディア「bouncy」事業を譲受

 

事業譲渡による会社売却のメリット・デメリット

事業譲渡による会社売却における売り手側と買い手側それぞれのメリット・デメリットをご紹介します。

 

事業譲渡による会社売却のメリット

事業譲渡のメリットには次のようなものがあります。
  1. 規模の経済性の実現
  2. 事業の多角化
  3. 新規事業への参入
  4. 既存事業の競争力強化
  5. 必要な取引を選択して譲り受けできる
  6. 事業継承問題の解決
  7. 創業者利益の獲得
「1.規模の経済性の実現」とは、現預金や不動産といった有形な資産のみならず、技術、ノウハウ、知的財産、取引先や流通チャネルなど無形な資産を得ることで、既存の事業規模を拡大して、営業力や交渉力、開発力などが向上し、企業競争力が高められるというもの。

「2.事業の多角化」とは、事業環境の激化などに備えて新たな事業分野に参入することや、生産・流通工程のバリューチェーン化の実現によって、経営体質の強化を図るもの。

「3.新規事業への参入」とは、自社にない事業に参入している会社の買収によって、新たな事業の開始に伴う時間・工数・コストを抑制するなど、新規事業参入のリスク軽減を図るもの。

「4.既存事業の競争力強化」とは、自社にない技術を持っている会社の買収によって、新たな技術を容易に手に入れ、既存事業の強化を図るもの。

ここまでは、会社売却そのもののメリットと言えますが、事業譲渡による会社売却ならではのメリットには次のものがあります。

「5.必要な取引を選択して譲り受けできる」とは、事業譲渡の場合、対象となる事業に関する取引や雇用を包括的に譲り受けることなく、個々別々に譲り受けることができます。このため買い手側としては、不良債権や過剰債務を受け継ぐことなく、事業を開始できるようになります。

「6.事業継承問題の解決」とは、高齢化や後継者不足によって自分の代で会社を廃業しようと考える中小企業経営者がたくさんいます。ですが、事業譲渡による会社買収を活用して、信頼できる次代の経営者に対して全部あるいは一部の事業を託すことで、廃業せずにその事業を活かすことができます。

「7.創業者利益の獲得」とは、売り手側の創業者が、事業譲渡によってまとまった資金を手に入れ、それを元手に負債を清算したり、残ったコア事業のために投資したりして会社の再建のために活用できます。

 

事業譲渡による会社売却のデメリット

事業譲渡には、売り手側、買い手側それぞれにおいてデメリットもあります。

まず、事業譲渡とは、相手企業の特定の事業を買い付けることであり、事業譲渡契約が締結されたら、契約で定めた期日までに譲渡金額を売り手側に支払うことになりますので、買い手側としては、それ相応の購入資金を手当てする必要があります。

次に、重要な取引の契約に定められたCOC条項(Change of Control条項)が発動された場合のリスクがあります。

COC条項とは、株主の変更や会社機関の変更など、それまでの安定した取引関係に悪影響を及ぼす恐れがある場合、契約の相手方がその契約を解除できるオプション条項であり、取引基本契約など重要な契約に定められることが多々あります。

これが発動された結果、事業譲渡による会社売却が今後の取引関係に悪影響を及ぼすと判断されると取引が中止となるリスクがあります。

これらの事象が発生すると、事業譲渡による会社売却の対価が、当初の想定よりも低くなってしまうことなどがあり、売り手側としては獲得できる譲渡代金が少なくなりますし、買い手側としては、当初想定していた対象事業の価値が下がり、会社売却後の事業経営がうまく行かなくなる可能性もあります。

さらに事業譲渡の場合、個々の取引単位で譲渡の対象とするか否かを選別できるので、不良債権や過剰な負債は承継されずに売り手側に残るというデメリットがあります。

売り手側では、事業譲渡によって得た資金を原資にこれらの不良債権や負債を清算していくことになります。

 

事業譲渡による会社売却の具体的な手順とは?

まず売り手側では、会社売却を仲介・あっせんする仲介会社などの専門家であるM&Aアドバイザリーと契約をするのが一般的です。

次に、専門家から紹介を受けた買い手側と秘密保持契約(NDA)を締結し、売り手側と買い手側で会社売却の基本的な条件について取り決めます。

ここで買い手側が会社売却に魅力を感じれば、意向表明書(LOI)を提出して事業譲受けのオファーをするか、あるいは、売り手・買い手の双方が会社売却に合意して了解覚書または基本合意書(MOU)を締結し、事業譲渡による会社売却の実現に向けて手続きを本格化させます。

この後、買い手側では、ビジネス、法務、人事、経理財務等多面的にデューデリジェンス(会社の価値を調査する手続き)を実施して、会社の課題・問題点を精査し、その結果として認識されたリスクを踏まえて価値判断を行い、事業を譲り受けるか否か判断し、買い手側が事業の譲受けを決定すれば、事業譲渡に関する契約書を締結します。

事業譲渡を実行する場合、株主総会が必要な場合と不要な場合があります。

株主総会が必要な場合においては、株主の承認が得られなければ効力が発生しないこととなります。

事業の売り手側は、効力発生日の20日前までに、株主に対して事業譲渡を行うことや株主総会を開催することを、官報公告や電子公告で周知する必要があります。

また、反対株主には株式の買取請求権があることも周知する必要があり、株主が少なければ個別の通知で済ませられますが、大企業の場合には公告と個別通知の両方を行う場合があります。

事業譲渡の売り手側では、効力発生日前日までに株主総会の特別決議で承認を得ることが会社法で定められており、議決権の過半数以上を持つ株主が出席し、2/3以上の賛成が得られれば事業譲渡が承認されます。

また、事業を譲受ける買い手側は、財産の名義変更手続きや許認可手続きを行なう必要もあります。 

こうした一連の手続きを経て、事業譲渡の効力発生日を迎えれば事業譲渡は完了します。

 

事業譲渡による会社売却のまとめ

事業譲渡は、現在の会社を切り売りして第三者に引き継ぐことになるため、売り手側にとっては不良債権や過剰債務が承継されずに会社に残り、事業譲渡の対価をもってこれらを整理・清算して、会社を再建するための手段となります。

事業譲渡による会社売却においては、事前の準備をしっかりと行い、メリット・デメリットを見極めて意思決定を行って計画的に実施することが、会社再建を成功させる近道であることを忘れないようにしましょう。

 

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鷹野 将和(株式会社八事財産コンサルティング 執行役員)

「グレートM&Aを増やす!」をミッションに、事業承継M&Aのアドバイザリー業務に従事。 「M&Aユーチューバー/タカノ」として、YouTubeを活用してM&A情報を提供している。